福岡高等裁判所 昭和26年(う)2965号 判決
原判決が被告人前田、同福岡等の本件密輸入貨物の原価として原判示真鍮屑二〇屯につき金一八〇九、二〇一円六〇銭、同銅屑一屯九五四キロにつき金一七六、六一〇円二四銭、同鉛屑二屯九一〇キロにつき金二一六、二七六円四八銭とそれぞれ認定判示していることは、所論のとおりである。ところで右認定の数額は原判決引用にかかる大蔵事務官作成の犯則物件鑑定書記載の原価よりその総計において金七三七、三二三円余を下廻つているのであつて、原判決の右原価の算出は関税法第七六条、第八三条にいわゆる密輸入品の原価は、関税定率法(行為当時)第二条にいう到着価格すなわち貨物の仕入地における仕入値段に仕入地より輸入港までの運賃、保険料等の諸費用を加えたものに外ならないとする趣旨に出たものと認められ、右見解は正当というべきであるが原判決がその挙示の証拠中いかなる資料を基準として前記数額を算定したかは記録上必ずしも明白ではない。むしろ記録を検討すれば、原審証人西隈政彰の証言に現われた前記鑑定書記載の原価の算定方法は必ずしも理想的とはいえないにしても、本件事案の性質上、やむを得ない次善の方法として是認すべきものであり、しかも同鑑定書記載の数額を不当に高価なものと認むべき資料は存しないのであるから本件における前記貨物の原価としては、右鑑定書記載の数額を認めるのが相当であり、原判決の前記原価の算定は適当でないといわざるを得ない。しかし原判決は前記の如く、右鑑定書の数額より遥かに少額の原価を認定しており、むしろ被告人等に有利に算出されているのであるから、原判決の原価算定の誤を指摘する論旨は、被告人のためにする控訴理由としては採用の限りではない。